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平成27年TOG実践セミナー in 東京

TOG副会長 町田利正

本年のTOG実践セミナー in 東京は、佐藤喜一会長の強いご要望で、「母体急変事の対応」をテーマとし、木野秀郷運営委員を中心に、主題の「京都プロトコール」を手がけてきた、(株)カテナシア(代表川崎光雄氏)との共同企画です。
今回のセミナーは、本年10月から施行の「医療事故調査制度」の中身とも絡み時機を得た研修会になりました。
元々、母体救命の実習は、京都産婦人科救急診療研究会の「-母体急変事の初期対応:京都プロトコール」が先行し、昨年から、日産婦医会、日産婦学会、日本周産期・新生児医学会、日本麻酔学会、日本臨床救急医学会、京都産婦人科救急診療研究会、妊産婦死亡検討評価委員会の7団体が「日本母体救命システム普及協議会(J CIMLES)」を設立、試験的な受講会を行っています。
今回のセミナーでご指導頂いた橋井康二先生は、京都産婦人科救急診療研究会の幹事長であり、J CIMLESでは、プログラム開発・改定委員会委員、研修企画委員会委員、幹事会幹事に就任され、運営の中核として活動されています。
 
TOG実践セミナー:母体救命-母体急変事の初期対応-
本受講会のプログラムは通常、基礎知識を学び、母体救命の基本実習、シナリオを用いた実技の訓練を1日で行います。プレ・ポストテストを含みます。
TOGはTOGらしく、基幹となる知識は、前日しっかり身につけて翌日の実習に備え、更に欲深く、美味しいイタリアンで、お腹を満足させ、十分におしゃべりもしましょうと下記の2日間を用意しました。
1.講演『母体急変の感知と対応』
  座長:木野秀郷運営委員
  講師:橋井康二先生
  平成27年10月10日(土)PM6:00 (株)銀座ユニーク会議場
2.懇親会(イタリアン:ラ・ベットラ・ダ・落合):銀座店 PM8:00
3.実習『母体救命-実技講習会』
  主インストラクター:橋井康二先生 J CIMLES関連医師
  平成27年10月11日(日)AM10:00 レールダルメデイカルジャパントレーニングセンター
 
演題『母体急変の感知と対応』は、橋井康二先生の講演です。
平成22年に京都大学、京都府立医大の産婦人科と両大学の救急医学講座に、京都産婦人科医会が加わり、「京都産婦人科救急診療研究会」を創立、医会の会員施設を臨床の現場として、妊産婦の救命・救急の連携システムを構築し、更に-母体急変事の初期対応:京都プロトコール-を作成、テキストブックはイラストを多用し、救命医療の基礎と産科症例の特異的な病態を詳述し、実技講習会では、各疾患の病態を正確に把握、各種モニターを駆使して、救命の初期対応を行ってきた。現在は京都府下から全国にむけ講習会を展開している。
 
急変の感知:産科特有な病態から
1.バイタルサインの確認
・意識レベル:JCS(Japan Coma Scale)
・血圧、・脈拍、・Spo2⇒自動モニター
2.分娩出血の確認
・時間性器出血量 ・子宮収縮 ・子宮底の位置 ・外陰部血腫の有無。
 異常あれば、原因を精査確認
1.意識レベルの低下:胸骨を拳でグリグリ、指をペンで強圧⇒開眼(-)
2.SI>1 (出血1.500mL予測) そして出血持続
3.SI>2(出血2.500mL予測)    ☆SI:Shock index (心拍数/収縮期血圧)
4.Spo2<95%(Room air)      以上の4ケースは高次施設へ搬送
☆1.は、JCSのⅢに相当するが、JCSで表現せず「呼びかけに応じない」。痛みに反応しない、等、意識の現状を報告すればよい。
 
妊婦の急変対応
 自発呼吸の有無
・呼吸:自発なしor はっきりせず⇒直ちに心肺蘇生開始。高次施設へ搬送
・呼吸:自発あり
・100%O2 10~15mL/min リザーバー付きマスクで投与⇒SPO2モニター
①SPO2≧95% SI>1 ⇒急速輸液(18,20G2本、細胞外液補充液)、左半側臥位、保温  高次施設へ搬送
②SPO2<95% 気道確保(誤嚥注、頭後屈・顎先挙上、経鼻エアウエイ) その後は①に準じて高次施設へ搬送
 
妊婦の心肺蘇生
 心肺停止
1.スタッフ集結、救急車要請、AED取り寄せ
2.胸骨圧迫:胸骨下半分を30回圧迫(30:2呼吸)。強く(5cm以上)・早く(100/分以上)・絶え間なく。左半側臥位か子宮を左側方に引っ張りずらして行う。
3.気道確保+人工呼吸
  ・頭部後屈・顎先挙上、経鼻エアウエイ、熟練者のみ気管挿管。
  ・バッグマスクまたは気管チューブで100% O2による換気を2回1秒かけて、胸が上がる程度の換気量で行う。リザーバーマスクを使用。02は10L/min以上。O2の量は、多量からの漸減が基本、逆はno。
4.心肺蘇生継続
  ・胸骨圧迫30回と人工呼吸2回繰り返し、上肢に静脈路確保。
  ・AEDが到着次第装着する。・胎児モニターは取り除く。
5.AEDに従う。徐細動後も胸骨圧迫は続ける。高次施設へ搬送
 
正常分娩における準備・対応
  ・血液型カード所持。
  ・分娩前にあらかじめ輸血同意書を取っておく。
  ・分娩時に18~20Gの静脈路確保。
  ・分娩後2時間迄は、自動モニターでバイタルサインを記録する(重要)。
 
救急用備品
・経鼻エアウエイ        ・吸引器  -80KPa
・酸素ボンベ (最低500L)    ・リザーバーマスク
・バック・バルブ・マスク リザーバー付(アンビューバッグ)
・妊婦用モニター(ECG Spo2)  ・静脈留置針(18~20G)
・細胞外液補充液        ・AED(自動体外式徐細動器)
・アドレナリン(1mg/A)     ・細胞外液補充液(できれば39度Cに加温)。
受講者 27名。
 
懇親会 イタリアンレストラン:ラ・ベットラ・ダ・落合
重くてボリュームのあるセミナーには、「合い間で、旨い物をたべ、お喋りしなくちゃ」と木野先生は云います。色んなレストランが候補にあがりましたが、今回はイタリアンの「ラ・ベットラ・ダ・落合」に決まりました。
高級レストランではないのに人気があり予約が困難です。「ベットラ」は、素材をたくみに調理し、フレンチとは明らかに異なる、イタリアを感じさせるTOG特別の料理を並べてくれました。橋井先生やカテナシアの川崎さんも交え、幅広な会話が、各テーブルで弾み、会員の奥様にも沢山ご参加頂き、きらきらと華やかなディナーになりました。スペシャルメニュー 【冷前菜】・本日の鮮魚のカルパッチョ・フレッシュボルチーニのサラダ ・パルマ産生ハムとメロン 【温前菜】・殻付かきのオーブン焼き・松茸とコンソメ・フォアグラのソテー 【ディナー】・新鮮なうにのスパゲティ 若芽ネギのせ・黒トリュフのリゾット 【メイン】・手長海老のシチリア風オーブン焼き・国産牛ロースのタリアータ・牛ホホ肉の赤ワイン煮 【デザート】・クラシックショコラのロールケーキ・イチジクのコンポート・ジェラート
出席者 34名。
 
実習『母体救命-実技講習会』
主インストラクター 橋井先生の基調講演から開始。昨夜の学習がベースとなり、習得すべき実習の意義を十分に理解できました。「母体救命」の理解度を知りたいと講演前にテスト様の試みがありました。講演のキモは以下でしょう。
1.生命徴候をいつも意識して診る。不安定なら直ぐに初期治療。図るのは生命徴候の安定化。護るのは母児の生命。次が母子の身体機能の温存。2.母体急変事の初期対応は「救命」に尽きる。生命維持の基本は、臓器・組織の適切な酸素化であり常に、脳の活動-A(Airway)気道-B(Breathing)呼吸・喚気-C(Circulation)循環をチェック・評価し障害個所を見極める。
3.まず五感で評価する。脳の活動を確認、そしてABCの評価をする。
バイタルサインのモニタリングは体温、血圧、脈拍数、呼吸数+意識レベル、血中酸素飽和度(Spo2)。それぞれチェックし評価する。
意識レベルはJCS (Japan Coma Scale): Ⅰ 刺激しないでも覚醒の状態。 Ⅱ 刺激で覚醒するが、刺激を止めると眠り込む状態。 Ⅲ 刺激しても覚醒しない状態、を用いる。その他の評価法でもよい。
4.分娩時出血のモニタリングは性器出血、子宮収縮、子宮底、血腫の有無。
5.生命徴候の安定化への初期対応は、全身状態の安定化を目的とする。OMI(オミ)である。
  O:Oxygen 酸素投与 M:Monitoringモニター監視 I:IV 静脈路確保。
6.危機的状況
①意識レベル低下
② SI>1かつ出血持続
③ SI>1.5
④ Spo2< 95%(room air)
7.妊婦の急変対応
①スタッフ集結:役割決定(臨床、AED等器材整備、連絡、血管確保班)
②呼吸:自発なしor はっきりせず⇒直ちに心肺蘇生開始:胸骨圧迫(30:2 呼吸) ;胸骨の下半分・強く・早く・絶え間なく。
③ショック:SI>1ならBD低下なくとも、急速輸液(18,20G)。
④AED:胸骨圧迫中、AEDが届いたらスイッチONにして、パッドを着け、以後はAEDの指示に従う。徐細動後も胸骨圧迫は続ける。
➄酸素投与(フエイスマスクなら10L/分リザーバー付き)
⑥モニター監視
 
全体の実習
・胸骨圧迫 ・妊婦の体位(仰向け、腹部を左に引き寄せ15~30度の角度)
・気道確保(酸素マスク・バッグ・バルブ・マスク) ・弛緩出血時のバルーン(Bakriバルーン)・輸液 ・尿量チェック(0.5ml/Kg/h)等々。
グループ(6名)実習:リーダー、医療実施者、補助者に分かれます。
 
1弛緩出血 2後腹膜血腫 3早剥 4HELLP 5羊水塞栓 6肺塞栓 7ショック(抗菌薬アナフイラキシー) 8子宮内反症 9子宮破裂の9疾患を想定。受講者は、3グループに分かれ、3か所に設置されたママさん人形に取り組みました。インストラクターと補助者は、精緻きわまるマネキンにパソコンで指令を発し、病態と生命徴候を刻々と変化させ、受講者に危機の評価と対処法を問い、実行させます。頭脳と手指がうまくからまり、全員高い評価を受けました。当日の疾患は、①羊水塞栓症 ②肺塞栓症 ③子宮収縮不全・出血性ショック ④子宮内反症・出血性ショック ➄抗菌薬によるアナフイラキシーショック ⑥脳出血による意識障害+痙攣 でした。
ポストテスト様な試験後 実習『母体救命-実技講習会』は終了しました。
受講者18名。
 
2015TOG年間事業022015TOG年間事業01